天草元気プロジェクトプレゼンツ『30代市長対談』(上)


天草出身の方に成功の秘訣を聞くコーナー
『先輩!ゴチになります!!』の企画から派生し、実現した「30代市長対談」の内容を
公開させていただきます。

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上天草市市長 川端 祐樹氏 千葉市市長 熊谷 俊人氏

司会 天草元気プロジェクト 佐伯
公開対談日 2010/5/30
対談場所 銀座熊本館(東京都中央区)

後半はこちら

市長は政治家でもあり、経営者でもある

<司会> 今回の対談のコンセプトとしては、「地方」というテーマで、今後、より地方が重要になってくるという
部分でのお話しをいただきたいと思いますが、熊谷市長は、今、現在日本で最年少の市長で32才で
いらっしゃいます。川端市長も同様に30代でいらっしゃいます。

熊谷市長は、千葉都市モノレールの社長公募を行われたり、メルマガの発行やランチミーティングで、
市民の方と交流をなさっているということで、非常に柔軟な対応をなさっている市長です。
公務員改革などを通じて千葉市の財政再建に取り組まれていらっしゃいます。

一方、川端市長は、就任直後から財政再建というのをテーマにされて、2010年の市政方針演説の中でも、
上天草の財政が改善しているというところと、企業誘致なども関東に来て活動されているのが
非常に印象に残っております。攻める市政をなさっている方です。

私が質問役に立ち、進行を勤めますのでよろしくお願いします。
後半は、質問コーナーも設けますので、是非、いらっしゃっている方からのご意見をいただければと思います。

早速ですが、今日、初めてお互い会われてご印象というのはいかがですか。

<熊谷> 予想通りというか。パワフルな方だなと思って、早速、控え室で話が盛り上りました。

<川端> 私よりも若いんですけれども、熊谷市長は。でも年相応に似合わないくらい、
非常にしっかりした方だなというのを率直に感じました。
問題に真正面から向き合って、それに対して情熱を持っていて、そういう姿勢が見えます。

<司会> 本当に快く受け入れていただいて、非常に感謝をしています。
さて、最初はくだけた質問から行きたいのですが、一番最初に、お互いの市のこれぞ一押し
というところを、是非、お話しをしていただければと思います。

<熊谷>千葉市の一押しというのは、やっぱり幕張新都心です。千葉市は、ご存知の方も多いと思いますが、
幕張メッセを中心に、例えば千葉ロッテマリーンズの本拠地であるマリンスタジアムなども含めて、
高層ビル群がある国際的な業務核都市に位置づけられているところなので、その幕張新都心という
近未来的な都市と、一方で内陸に農村、里山がたくさんあるような、そういう自然とが同居した都市ですね。

<司会> 私どもの、熊本の天草というところからすると、千葉市のイメージはものすごい都会という
イメージがあるのと、結構、住みやすい都市というのも一緒になっていて、すごく面白いと思うんですけれども。

<熊谷> ええ、常に快適です。東京にも近いですし、自然も豊かですから、非常に良いです。何でもおいしいし。

<司会> なるほど。わかりました。ありがとうございました。では、上天草市の一押しは。

<川端> 今、住むにはうちも非常にいいです。ただ私達が、今、上天草市として経済戦略を立てている中で、
自己分析しました。自分達がどうなのかという強みを知らなきゃいけない。その強みというのをまとめてみると4つあるんですね。
一つが景観、もう行っていただいたらわかるんだけれども、ものすごくきれいです。
もう一つが食。おいしいものがいっぱいあります。3つ目がレジャー。海で遊べるマリンスポーツです。あるいは山で遊べる。
そして最後が癒しの空間なんです。千葉市もいいかわからないけれども、上天草市もいいところですので、癒しの空間として。

<司会>ありがとうございます。さて次の質問ですが、これは是非伺いたいと思っていたのですが、
市長になろうと思ったきっかけをお伺いできますか?川端市長からお願いします。

<川端>市長になろうという気持ちはほとんどなかったんです。
20代、あるいは30代前半は、ゆくゆくは政治の世界に入りたいなというのはありましたけれども、
ただ自分がこんな年で市長になるというのは、想像をしていなかったです。
ただそういった中で、前の市長さんが辞められまして、私はその当時は市の職員だったです。
このままではちょっとおかしくなるなと率直に感じていまして、そういった中で、自分ならできるという部分もあったんです。
それで立候補したんですけども、裏話で言いますと、私自身が政治家の家系というのがあるんです。
そういった点もがつながりました。その代わり、大変な仕事だと思いますが、市長なんか誰がやったっていいんですよ。
私はそう思っています。

<司会>危険な発言ではないですか?(笑)

<川端>今日は、危険な発言もしていきます。(笑)誰がやったっていいんです。
要は、市民がしっかりすれば、職員がしっかりすればいいわけね。そういうものを私は創り上げたいなと思っています。
だから市長なんか目指さなくていいんだよというのがあるんです。

<司会> なるほど。でもすごいこれは参考になるお話しというか。

<川端> ただ今のところは使命感がありますからね。僕が立て直して、次のステップに結びつける作業を必死にやっています。

<司会> 実は、この会の直前に、川端市長が関東の企業さんと打合せをしている場面に出くわしたのですが、
実は、川端市長のイメージが、できるビジネスマンだなという印象がありました。

<川端> どうもありがとうございます。

<司会> それでは熊谷市長が、市長になろうと思ったきっかけを教えてください。

<熊谷> もともと私は政治家の一家でも何でもないのですが、とにかく千葉市がこのままではいけないだろうということを
感じていました。当然、市長にいきなりはなれませんから、市議会議員になって、それでずっと議会で言い続けて、
訴え続けてきたのですが、やはり過半数の世界ですから変わらなかったんです。
これは市長になるしかないだろうというのは、漠然と思いました。

私の傾向もどちらかと言うと、マネージメントのほうに興味がありますから、いずれにしても首長をやりたいと思ってはいました。
でも、すぐになれるわけないなということで、ステップをきちんと踏んでなろうと、市長を目指して頑張っていこうというところで、
前の市長が収賄罪で逮捕されました。
この状況の中で、これは私が出て、立て直すしかないだろうということで、立候補して市長をやらせていただいて、そういう感じです。

<司会> それはやはり前職の絡みもあってということですか。

<熊谷> もともとこの千葉市は、良い街なんですけれども、ご多分にもれず、箱物主義だったり、
結構、危ない積極財政をずっとやっていました。私から見れば、もう崖に向かって一直線に突き進んでいたので、
本当にまずいと。このままではまずいというふうに思っていて、しかも戦後1回も、政権交代がなかったんですよ。千葉市は。
ずっと後継者しか受かってこなかった、そういうしがらみも含めて、借金も雪だるま式に増えた街だったので、
このままでは駄目だ、リセットしなければという思いがあったので、千載一遇のチャンスだと思って立候補しました。

<司会>  なるほど。・・・  わかりました。やっぱり伺って共通点があるというか、このままでは駄目だというか、何とかしなきゃというところは・・・

<熊谷> そうでないと、こんな大変な仕事できないですね。

<司会> 政治の世界にも興味がある方も今日は何人かいらっしゃっています。
これは予定にしていなかったんですけど、立候補されて選挙運動中に当選されると思われていましたか?
それとも何とかするんだと思われていましたか?熊谷市長はいかがですか。

<熊谷> 私は、選挙が近づいてきた頃から、もうこれで勝てなければおかしいんだという思いがありました。
どう考えてもこのままでは駄目だし、市民の皆さんも、薄々、じりじりと分かり始めているし、きちんと主張すれば
わかってもらえるはずだと。当選するかどうかのドライな計算のようなこともやるわけですが、最後はやはり、
いけるかもしれない、可能性はあると思うくらいで、思い切りで出るんですね。
でも政治家として、選挙を何回も経験していると、もう1週間か2週間すると、もういける、
これは勝てるというのは肌で感じますね。

<司会> なるほど。ありがとうございます。川端市長はいかがでしたか。

<川端> 職員からはほとんど反対されました。応援してくれたのは端的に言うと親父だけですよね。
そういった中で、自分自身決断したんですけど、これは非常に重い決断だったですね。後に戻れませんから。
結局、振り返ってみますと、政治家という職業は、「私」というのを捨てるという作業なんですよ。
それがないと、できない仕事なんですね。その「私」というのを捨てる作業が選挙なんです。
そういう洗礼を受けるんです。どろどろしていている人間関係だったり、あるいはいろいろなデマ、情報操作。
怪文書も3回だされましたね。5人で闘ったんですけど、私は一番若かったので、むちゃくちゃやられて、
そういった中で闘いました。2ヶ月間ぐらい、ずっと・・・今、熊谷さんがおっしゃられたように、
1週間、2週間したらわかると言われましたが、私もだいたいわかりました。

<司会> なるほど。そういう戦略のところでは、かなりクリーンなイメージをお持ちのお二人ですが、
やはり選挙中というのは、そういう世界を・・・

<熊谷> それは当然ですね。逆に言えば、注目されて勝つ側に近づいているからこそ怪文書というのは出るわけです。
だからそれはもうある意味、一つの登竜門ということです。だから怪文書が出ると、これはいけると。
精神的にはいやです。ありもしないようなことを、全部ばーっとばらまかれるわけですから。
でもはっきり言って、選挙をやっている途中から、そういうのはだんだん超越してくる。

<川端> 自分がまな板の鯉なんですよね。世間の意向も、自分は捨てコマでもいいんじゃないかということで、出て行く。

<熊谷> だから、もう某巨大掲示板にいくら悪口を書かれても、びくりともしなくなりましたね。
当然、100人いれば50人ぐらい文句言ってもしょうがないだろうというふうに思いますよね。悪口には慣れますね。

<司会> それだけやっぱり目的があるからということですかね。その先にある、受かるだけが当然目的ではなくて・・・

<熊谷> 本当に市長というのは、賭けだったらやらないほうがいいですよ。

<川端> 「私」を捨てないとやれない。非常に恐縮な話になるんですけれども、この仕事は公人ですので、
使命感を持ってやらないといけない仕事ですよ。

<司会> こういう話をした流れで聞きにくいのですが、受かった後に、若い市長だから得したことってありますか?
川端市長いかがですか。

<川端> 得したことはないです。

<熊谷> ありません。

<司会> あまり印象にないということですか。

<川端> 印象にないですね。受かった瞬間に、私もガッツポーズはしているんですけど、ものすごい気持ちでした。
頭の中は、明日からどうしようと、受かった瞬間、僕はもう次のことを考えていました。みんな涙流して喜んでくれて、
非常に感動的なんですよ。ただ一人ぽつんと、次のことを考えていました。

<熊谷> ものすごくわかります。私も1週間ぐらい前から、もう優勢と出ている時点で、もう実は頭の中は、
受かった後のことしか考えてないから。万歳は一応するわけです。本当に自分がどういう顔していたか、わかってないんです。
引き締まって、やばい・・・がんばらないといけない。

<司会> 責任があってという感じですね。なるほど。熊谷市長は・・・

<熊谷> 今までの市長は、60才代の方が多かったので、私みたいな年齢だと、そこら辺にいる若者が、
市長をやっているわけです。みんな千葉の人はいい人なので、なんとなく応援しなければという気持ちがあって、
市政に対する協力姿勢というのが、すごく多いんですね。何やっても応援をしてくれる雰囲気はまずある。
これはとても有り難いなというふうに思います。一方で、何かあったら、
「若いからあの人はわからないんだ。若いからこの辺の苦労がわからないんだ。」と、
全部そうやってくっつけられるわけですけれども、わからなくても、何か理屈付けて文句を言われるだけですから・・・
いきなり50才にはなれませんから、しょうがないと思います。

<司会> これはちょっと余談なんですけど、最初、この対談の打診をしに千葉市役所に行った時に、
千葉市ウォーカーのグラビアの表紙になっていましたね。
これはすごいなと思って・・・たまたまその号が、モノレールに貼ってあって・・・

<熊谷> 本当にたまらないです。全国テレビにも、こんな面白い雑誌が出たらしいと。それで言われるわけです。
表紙を見て、だいたいみんなほめてくれるわけですが、一方では、市長、仕事しろ、勘違いするなと、
いろいろな意見が来るわけです。

<司会> 今ちょうど、この得した点の反対に苦労した点もお伺いしたかったんですが、熊谷市長は、
もう一体化していたと。川端市長はいかがですか。逆に苦労した点というのは。

<川端> 苦労は、いろいろありますけどね。一つは、私自身が組織のトップであるんですけれども、
その組織はもともと居た組織ですからね。そういった点で言うと、人間的な苦労というのは、日々、
向こうも気にしますでしょう。だから、なるだけ私自身もそういう意識をしないように・・・

<司会> ご出身の組織の一員からトップになったという部分ですね。

<川端> あとは議員さん達ともですね。さきほど控え室で熊谷市長と話をしていたのですが、
市長という職業は、行政経営者であって、政治家なんです。
会社経営者としての立場プラス政治家としての立場があって、その二つの仕事をやり遂げなきゃいけない。

<熊谷> これは深いですね。行政の仕事にだけ専念していると、政治家として弱くなりますから、
どんどん足下をすくわれ始めるんですね。だから両方やらなければいけない。

<司会> これは、やはり市長という立場、例えば他のイメージがないのですが、国会議員さんというと、もう政治家の仕事ですよね。

<熊谷> たぶん政治家しかないですね。大臣や政務三役にならない限りは、基本的には政治家の
仕事だけやればいいんです。だから足下を固めて、選挙活動を特にやっているわけです。

<司会> 実際、そのあたり印象があります。いろいろなニュースを見ていても、非常に政治不信を呼んでいる
原因になっているんじゃないかなというのを、今お伺いしていて本当に感じるんです。
しかし対談の内容は、経営者視点でお話しを聞けるので、非常に面白いなと思っています。

暗い話をしているつもりはない。

突破するんだという前向きな気持ち、逃げるよりはまし
<司会> 今、地方ができること、今後、こうやって行きたいというところを、是非、両市長から
お伺いすることで、また自分達の市民活動にも、ヒントが見えてくると思っております。

まず最初に財政というところお話しをお伺いしていきたいと思います。
今の財政の課題とテーマについて、ちょっとずつお伺いしていきながら、意見がそれぞれ出るようであれば、
そのまま進めさせていただければと思います。
それではまず、上天草の財政についてお伺いしていきたいと思います。

<川端> 今、うちが取り組んできたことというのは、2つの言葉に集約されます。
1つは、「再生」。もう1つが自立。1つ目の「再生」、言ってみればリストラです。
行政コストをどんと落として、財政規律を守ってやっていく。
いろいろな意味で再生を図るという意味の再建ですね。

自立というのは、地域の経済力をしっかり高めて、地元の人達の自立する気概、そういったものを
高めてあげて、てこ入れして、自治体として自立するだという、そういう方向付けを持ってやっているんですね。

1つ目の再生については、私どもはある程度の道筋が付いています。
平成19年度時が一番悪かったんです。丸3年、再生プロセスの中で、かなり痛みを伴う作業もしました。
私も随分嫌われることもやりましたが、結果としては、財政再建、健全化がかなり進みました。

そして先ほどもビジネスの打合せしていましたけれども、今現在取り組んでいるのが、
自立ということに向けて経済力をつけることです。
経済力を高めて、そして税収を増やす、あるいは人口を増やす。そういう取り組みをして、
国とか県に頼らないで、いろいろやっていけるような自治体づくりを模索していく。

これは非常に壮大で、期間も長いテーマになりますけど、ただこれをしないと、天草地域は結局浮上しないです。
少子高齢化、過疎化ですね。だからこれはどうしても対策をやらないといけないわけですが、
今まで行政側というのは、やったことなかったわけです。

皆さん、不思議に思われるかもしれない。意外でしょう。やらなくて良かったんです。
なぜかと言うと、明治以来の国、県、市町村という、ピラミッド型のポーチがあるわけです。
この中で、行政運営がなされてきました。
つまり、国の通達、あるいは県の方針、これに合わせてやってくればよかったんです。
でもそれができなくなりましたよね。

これからは地方分権。地域のことは地域で解決しなさいと、そういう時代になったんですね。
我々がこの背景の中から、地域の一番の課題である過疎化とか経済に対する対策に取り組んでいます。
行政職員も、今までやったことないから、ノウハウも何もなかったです。この3年ぐらい、
大変苦労をしていますが、少しずつ道筋が付いてきているし、また、人材という部分でも
整ってきたかなと。あとは結果が・・・

<司会> 一番大事な・・・

<川端> 一番大事なことが最後に来ているわけですね。

<司会> なるほど、天草元気プロジェクトでもよくお聞きしているところが、
特に企業誘致の推進です。今の実績や今後の課題というのがあれば。

<川端> 企業誘致という考えは、もともとありませんでした。
私が就任したのが平成19年です。平成19年の12月ぐらいに企業誘致の準備室を設置しました。
20年4月から企業誘致課を作りました。

我々の地域は非常に小さい田舎なのですが、そこで5人体制です。自由に動ける職員が5人です。
選抜された方々が今、動いています。
サブプライムの影響を受けましたが、案件としては、今後成立するようなものもあります。

それと、企業誘致も大事ですが、地場産業の育成も大事なんです。
地場産業というのは、地元の人達は、申し訳ないんですけど、まだ力がそうありませんので、
やはり行政がてこ入れしなければならない状態です。
こちらに物産の販売に来るとか、あるいはマーケティングするとか、そういった作業になります。
これは何かというと、情報量です。情報量を高めるために、出て行って収集して、
その情報と地元の企業とのマッチングを今やっています。

<司会> まさにその部分で天草元気プロジェクトがご協力できることもあると思います。

<川端> 今後ともよろしく。

<司会> ありがとうございます。次は熊谷市長にお伺いしたいのですが、千葉市は関東圏にある
大きな政令指定都市であり、人口の違いや、産業の違いはあると思います。
先ほどお話しされたこともあるとは思うんですが、財政に関して、どういう課題を、
どういう形でクリアしていらっしゃったかというのをお伺いしたいと思います。

<熊谷> 千葉市は、もう少しで96万人になります。工場もたくさんあって、財政力も
比較的豊かです。しかし問題があります。政令指定都市に18年前に移行してから、
ものすごい勢いで都市基盤の整備をやってきました。
道路をひいて、下水道や、いろいろな施設を作ったため、借金の返済もすごい急ピッチで行っています。
今まさに借金の返済のピークが、ここからあと5年から10年というところで来ます。
そこで世界的大不況がやってきて、税収減がダブルパンチで効いていて、単年度の資金繰りが
大変危機的な状況になってきているんです。

そのため、私は2009年10月に「脱・財政危機宣言」という、財政危機を突破するんだという
宣言を出しました。先ほどおっしゃったように、「再生」です。リストラです。
大リストラをやって、私も相当恨まれていますけれども、予算の使い方を抜本的に変えて、
事業の見直しをして、ばらまきをやめて、それから職員の給料も申し訳ないけどカットして、
自分もカットしてと、こういうことはやっています。

我々の大きな方向は、まさに自立とおっしゃいましたけど、最終的には自立なんですね。
市民の自立なんです。結局、千葉市は高度成長の中でお金がありましたから、
市民がやらなければいけないものも、全部行政がやっていたわけです。
本当に至れり尽くせり、ゆりかごから墓場までやっていたんです。
だからはっきり言って自立できていないわけです。それを「違うよ」と。自立しないと、
もう本体が倒れてしまうよ、母屋がと。それをきちんとデータで出して、だからコストの高い
行政の職員に、やらせてはだめなんだと。
だからゴミ拾いだって自分達でやるべきだし、いろいろなものの施設の管理も自分達でやるべきだ
ということで、どれだけ市民に分権できるか。市民に権利、権限も渡して、その代わり責任も
持ってもらう、汗もかいてもらうという、その辺の96万人の市民の活用です。

これが我々の大きな大きな、10年間、それに向かってやっていこうというのが大きな方針です。

<司会> なるほど。形は違うかも知れませんが、何か共通点があるような。

<熊谷市長> 今、全国、全部同じですよ。結局、右肩上がりの中でずっとやってきて、
もうどう考えてもおかしいと言っているのに、転換が遅れている自治体だって山のようにあるわけです。
国なんかまだ転換なんかしないわけですから。

<川端> それが一番いけない・・・

<司会>だからこそ地方が、一市民が考える必要があるということですね。
次に、医療とか福祉というテーマでというと、どういう課題が今あるのでしょうか。

<熊谷>
千葉市は高齢化率というのは、だいたい20%ぐらいで、比較的若い街なんですけれども、
ただ団塊世代がすごく多くて、戦後の急成長の中で人口が爆発的に増えてきた街なので、
一気に高齢化がものすごい勢いで始まります。

特に団地、マンションの比率がすごく高い街なんです。ある区では、ほとんど団地かマンションという区があるくらいです。
そういう高齢化する団地群が10年後に続出するので、それに対して今のうちにどう備えをするか。
マンション、団地の建て替えも考える必要がありますし、エレベーターなども設置しないといけない。
ひとり暮らしのお年寄りの見守り支援とか、介護の施設の不足への対応、人材不足などという10年後に来る
パンデミックに向けて、10年間どういう準備をするかというのが、我々の大きな大きな課題です。
今まで楽していた分、すごく大変なんです。

<司会> なるほど。次に川端市長にお伺いしますが、僕らの地元の天草というのは、比較的もう
高齢化率は高い状態だと思うのですが。

<川端> うちで32%です。

<司会> 今の医療、福祉でのテーマはどのようなものでしょうか。

<川端> 医療、福祉というのは、社会保障制度を根本としているんです。
我が国の社会保障制度は、ある程度、達成されていると思います。
今、私達の自治体でも、本当に極限まで困った方というのは、そういらっしゃらないです。
だから生活そのものはできるわけです。それ以上の何かということになると、心の部分なんです。
その心の部分を達成するのは、行政側の制度ではなかなかやりにくいものがあります。

我々は今、社会福祉協議会で今、賄っています。
要は、ボランティア活動を大々的に取り入れ、助け合いの精神、支え合いの精神のもと、
福祉の部分を達成しようということで取り組んでいます。
私も彼らの活動には参画しまして、その分、予算も増やしています。
そういう形で今、社会保障制度とは別のものからの支えというのをやっている、考えているところです。

<司会> 先ほどの財政の部分を考えると、たぶん福祉の部分は、市民が自ら率先して
お金は払いたがらないと思うんですね。そこに対しての選択と集中でしょうか。

<熊谷> まさにそこなんです。私も市長になって予算を編成すると、
「なんでこんなばらまき福祉をやっているんだ」と憤りを感じるような施策をいっぱい作ってきているわけです。
先ほどおっしゃったように、社会保障はきちんとしているから、はっきり言って、全員にばらまく必要はないんです。

お金持ちのお年寄りから元気なお年寄りも含めて、タダでお風呂に入れるようにしたり、
タダで針灸のマッサージを受けられるようにしたり、そんなので何億円と出している。
そういうのをやめて、本当に困っている人に、ピンポイントにお金を使うという、そういう方向に
切り替えないといけないんですが、先ほど言ったように市長は政治家でもあって、それは非常に危険なんです。
広く、薄くばらまいた方が、選挙は受かりやすくなるんです。

困ってない人から全部集めて、困っている人に出しても、それは対象者1/100ぐらいになるわけです。
それで予算が100倍ぐらいかかる。明らかに選挙上不利なんです。だから広く、薄くばらまくようなのが
ずっと残ってきているというのが、この国の実態だと思います。

<司会> なるほど、上天草で今後というテーマで、こういう形の話というのは・・・

<川端> やはり福祉とか医療は、これは市町村で賄えと意見をいただきますが、
逆にこれは、根本的に国の課題、公益的な課題ですね。だから今、議論すべきなのは、やはり財源論です。
我々の医療制度の柱の一つである国民健康保険ですが、これはもう基金もほとんどありません。

私達、単独の市町村でこれを運営しているのですが、これはやりきれない。無理です。
これは介護保険と一緒に公益でやるとか、あるいは全部国で制度化するとか、そういう形にする。
また消費税を入れて、財源をしっかり手当てするという、そこに踏み込まないと、もう市町村単独では無理です。

<熊谷>この国の保険制度は崩壊します。あと5年以内に。確実に無理なんです。
その無理をずっとごまかしてきているです。後期高齢者医療制度で大騒ぎになりましたけど、
そんなレベルではないものが、これから起きるんです。それを政治家は全然伝えていないんです。

<司会> 今の話は僕だけですか。結構、衝撃を受けています。
なんとなく想像はしているけれども、はっきり言われると、「ああ、やっぱり。」みたいな。

<熊谷> 私が、市民によく言っているのは、行政の無駄を減らすというのは、我々は常にやり続けます。
ただし、はっきり言って今の福祉レベルを維持したいんだったら、消費税は20%ないと駄目です。
それが嫌だったら、年金を3割カットするか、対象年齢をもっと上げるか、どちらかしかできないんです。
それをしなければ崩壊・倒産の国に住むか、そういう二者択一に入ってきているんだ、と。
この厳しい現実をいい加減に直視しないと、この国は駄目だと思います。

<司会> これは過激ですね。

<川端> 熊谷市長に言ってもらったんですけど、だから皆さん、ギリシャの問題と似たような、
根本的な構造は我が国もある。

<司会> 上手くごまかされているというか、見せられてない。

<熊谷> 明らかに数字が示しているではないかと思うわけです。
政治家は、何とかなるかもしれないとか言っていたから、何とかなるのかなと思われているのかもしれませんが、
どう計算しても成り立ちません。今で成り立たないということは、10年後、20年後、もっと成り立たないわけです。

今後お年寄りはもっと増えて、もっと社会保障費はかかる。1.5倍くらいになる。それで働く人は減る。税収は減る。
今で成立しないということは、将来、もっと成立しないわけです。
正直言って消費税10%ぐらいにすれば、若干維持できるかもしれないけど、これでは無理ですね。
絶対に20%にしないと成立しないんです、この国は。

<司会> よく国を会社として見た時に、財政的にまずいということは重々承知していたつもりですが、
本当に僕だけですか?自治体の首長から面と向かって言われると、衝撃をうけます。

<熊谷> これを言うと、絶対に行政の無駄を削減してから偉そうなことを言えと言われるわけです。
それはやる。やりますが、20%を19%とか18%で済むようにするぐらいしかできません。
無駄を削減するだけだと、そんなものです、埋蔵金でぽんと5兆円も発見されたなんていうのはないです。

<司会> なるほど。自立というテーマにつながってくると、我々がやはり自立していく。

<川端> 日本国家として戦後の歩み方として、もう一回振り返って、防衛や外交もアメリカ依存型、
メンタルな部分も依存型ですよ。でもそうじゃないですよと。みんなでもう一回、自分達の将来を
しっかり設計して、それで今、どうするのという議論を本当はすべきなんですよ。

<司会> もっともっとしていければと思いますね。

<熊谷> 国債が暴落したら、長期金利が上がる。そうなると、我々は困ってしまうんです。
金利が上がったら、我々地方自治体が一生懸命借金を減らしていても、利回りが一気に増えてしまうわけですから・・・。

<司会>そうですね。地方が崩壊しますよね。連鎖倒産ですね。

<川端> そういうことが起こらないようにしなきゃいけないですよね。

<司会>このままだとそういう道筋に乗ってしまっているというところですね。

<川端>いつ、そういうきっかけが出るかでしょうし、日本の財政破綻が現実的になってきているという見方もあります。
日本国債がデリバティブという金融商品を通じて空売りされているんです。すでに。
これで儲かる人達がいますよね。僕はぞっとしたんですけれども、例えば、6億円ぐらい投資したら、これが120億円になるんです。
このデリバティブ商品は、日本国債が、日本が破綻したという想定のもとの金融商品ですよ。ものすごいハイパフォーマンスです。
もしかしたら、それを本当に仕掛けるかもわからない。それの餌食にならないように、しっかりと国を守る。

<司会>  恐ろしい話になってきました。

<川端> 暗い話になっちゃいましたね。

<熊谷> だいたい市長をやっていた人というのは、みんなこの辺は理解するんですよ。
何とかしようとしているわけですから。そうするとだいたいの首長さんが言うのは、
「市長は、暗い話ばっかりする、と言われる」と。みんな言われるという経験があります。でも言うしかない。

<司会> そうですね。それを直視しないと解決はできない・・・

<熊谷> 暗い話をしているつもりはないですからね。これを突破するんだという前向きな気持ちでやっているだけですから。
逃げるよりはましだろうと。