苦労を買わないと将来はない 4/4(若松孝市さん)


天草出身の先輩方にランチをご馳走になりながら
成功の秘訣を聞くコーナー
『先輩!ゴチになります!!』

第5回目はこの方にお話をお伺いしました。

interview-201011-wakamatsu

株式会社 東京美工 代表取締役 若松孝市さん(姫戸町出身)

美術監督をつとめられた映画
「はやぶさ 遥かなる帰還」
公開されました。
聞き手 天草元気プロジェクト 松村・福本・佐伯・井上
取材日 2010/11/29
取材場所 懐石・会席料理 いかりや(新宿区)

苦労を買わないと将来はない 1/4(若松孝市さん)
苦労を買わないと将来はない 2/4(若松孝市さん)
苦労を買わないと将来はない 3/4(若松孝市さん)
苦労を買わないと将来はない 4/4(若松孝市さん)

新宿のいかりやさんで美味しいお酒を頂きながら、お話を伺いました。
撮影現場でのお話を伺っているところからです。

「格言があるように、苦労を買わないと将来はないと思った方がいい」

AGP:管理・経営者でありながら現場でやってらっしゃるってことですもんね、考えてみると。

若松:だけど、若者たちのこれからの頑張れるような形をつくってあげようと思ってやってるわけよ。これぞ天草元気プロジェクトじゃないの?

AGP:そうです、そうです。

若松:なせばなる何事もだよ。

AGP:元気プロジェクトはまだまだひよっこですので。

若松:なさねばならぬ。

AGP:いばらの道的なものがありますけど。

若松:そういう価値観がおれ彼と合ったんで、いまだに付き合ってやってるわけ。
でもね、やっぱり一人じゃ何もできないんだよ。例えば、映画なんていうのは一人じゃ何ともできない。
総合芸術だし。それがためには、みんなそれぞれが何をするかという協力し合わなきゃできない。
やっぱり今まで話してきた中で、例えば、京都では、齋藤武市監督と会って、自分はこうなったと。
で、言えることはね、自分ができるからやるんじゃない。できないことをやれるようにするっていうのが。

AGP:今できないことをやれるように。今はできて……。

若松:自分じゃ無理かもしれない。人の要求っていうのは無理を要求するもんなんだ。
無理なんだけど、可能性に懸けるわけ。その可能性にもっと。
でも、相手が思ったことの上をいかないと人は認めてくれない。

AGP:満足しないですよね。

若松:だから、言われたことをやってるようだったら、100%やっても、何だ、おれが言ったようなことだよな。

AGP:そうですね。そうなりますね。

若松:言われたことプラスアルファをする。

AGP:これ、よく「ゴチになります!」をやるんですけど、みんな同じことを仰るんです。
言われたことをやってても駄目だと。

若松:駄目だよ。

AGP:最後に天草、ふるさとに対しての思いを聞かせてもらいたいんですけど。

若松:天草に関しては、私は姫戸出身。本渡の進化に比べたらど田舎だって言われる姫戸なんで。
この前、久々に田舎へ行ったらね、自分たちのころより全然元気がないなと思った。
地元には、今後も協力していきたいなと思ってるんだけども、田舎ってさ、東京みたいに便利だから
良いってことではなく、これはこれで豊かなんだと思える田舎づくりがいいと思うんだよ。
姫戸に行って一番がっかりしたのは、日本でもあんまりない、満潮のときは島になって、
干潮のときは歩いていけるところ。
あんなところを埋め立てられちゃって、今、防波堤みたいなのが出来ている。
「何ちゅうことをしてくれたんだ」と思うんだけど。そういう自然を壊さないでね欲しいよね。
「裕福にとは言わないけど、幸せに暮らせる田舎づくりがいいかな」とおれは思ってんの。
そういうことにはできるだけ協力したいなと思ってる。
もうちょっとしたら、おれも引退して、田舎へ帰って暮らすよ。魚釣りでもして。それが夢なんだよ。
だから、そういう町づくりをしてくれるといいよね。

AGP:田舎らしい豊かなという。

若松:そうそうそう。田舎、田舎の豊かさがあると思うんだよ。
そういう生き方っていうのはやっぱり東京に来てたら特に思うだろう。

AGP:そうですね。

若松:今回、西田さんと一緒に仕事してんだけど、彼が言ったんだよ。
「CGのような軽いもので人の心を打つか」と。
『劔岳』のときにね。「ああ、ついに言ってくれたか」と。
いろいろお金掛ける作品はあるけど、命を懸けて作る作品はねえよな。
だから、安易に何でもこうやってやるんだったら、それで発展があるのかって。

AGP:そうですね。それはもうお金とかの話じゃないですもんね。

若松:臨場感だとか、レンズの使い方とかいろいろ違うんだよ。
それをお客さんに提供したいがために『劔岳』を撮ったわけ。
本当にこういうふうにしたのが映画なんだよと。映画ってこういうもんなんだよって。

AGP:天草の出身者で集まって、天草の思いでこういう話にもなったんですけど、
その知恵を集めたら、経済だけでもなく、豊かな田舎というには、
やっぱり元気がないなって思います。地元がどうなってるんだろうって。

若松:天草っていったらさ、天草四郎が君臨しているわけだよ。

AGP:はい。

若松:でも、天草四郎以上に頑張ろうって気持ちでやりゃあ、何とかなるんじゃないの。

AGP:そうですね。

若松:この現代の中で、何となく天草からここ東京まで出てきたことってすごいなと思う。
井の中の蛙からやっと出てきたと。出てきた中で、じゃあ、何をするかと。
これで一旗揚げようっていう気持ちを心底持ってないと。ちょっと疲れたかなって言ったら駄目なんだよ。

AGP:そこは個人、個人がそうですよね。

若松:いつか天草へ、もう駄目だったら天草へ帰ろうなんて、そんな根性じゃ駄目だと思う。
4年ぐらい前にまた新宿にうち買ったんだけど、初心忘るべからずで、
最初、京都から出てきたときに、東京ってすげえな。
そのとき赤坂で仕事していたんだけども、いつも新宿で遊んでいたわけ。
新宿は眠らない街、新宿はすげえなと。すげえなと思って、
おれはここに引っ越してくる前、清瀬に住んでたの。

AGP:へー。

若松:東京都清瀬市。おれ、こんなところでいいのかよ。最初、新宿ってすげえなと。
やっぱり初心忘るべからず。新宿に行こうと思って、それで新宿にうち買った。

AGP:なるほど。初心忘るべからず。

若松:うん。やっぱり自分が若いころ、二十歳代のころなんて、車なんかどうやって買えるんだよって思ってた。
駐車場代は高いし、ガソリン代や税金払ってね、冗談じゃねえ、もう一生無理と思ったことなのに、いつの間にか楽勝になる。
与えられた仕事以上にしゃかりきになって頑張ると、どんな仕事でもいいんだよ。
その中で、今、自分は美術監督としてやってんだけども、要するに、その中で飛び抜けた人になると、
黙って金は後から付いてくるよ。金を求めたら、金は逃げていくんだよ。

AGP:金と女は追えば逃げるって、みんな先輩は言いますよね。

若松:だから、次、先をどうすればいいかっていうことを自分で精いっぱい、
今あることを精いっぱいやっていって、一つ一つ成し遂げていけば、明るい未来がある。

AGP:一旗揚げるぞって気持ちを忘れちゃいかんってことですね。

若松:うん。それをただ言われたことだけやって満足してるようじゃ駄目。
だから、自分は幸いにも、運も、運とやっぱり一番大事なのは人との出会いだよ。

AGP:そうみたいですね、本当に。

若松:で、相乗効果が現れて。ただ言われたことだけやってるんじゃなくて、
言われたことプラスアルファをやらないと絶対未来はない。

AGP:木村大作さんとの話も、喧々諤々だけど、本気で付き合ったってことですよね。

若松:うん。だから、今でも随分仲がいい。

AGP:だから、今でもですよね。

若松:20年近くなるけど、向こうはセクションは違って撮影部、こっちは美術部。
そしたら、大作さんや撮影部でいろいろ言ってるけど、おれは美術の専門家として、
この人より劣るわけにいかねえだろうって、言われたこと、これより絶対上にいってやろうと思う。

AGP:結果、いいものをつくるってことですね。

若松:うん。だから、言われたことは最低限だから。言われたことは最低限。
それプラスアルファでやる。そうでないと認められたくないでしょう。

AGP:そうですね。お互いそうですね。

若松:で、それが言われたことをやったがために、やったがために、
実は下だったということもあるわけだ。それは失敗なわけ。でもさ、それはチャレンジした上での失敗だから。

AGP:そうですよね。やらずよりも。

若松:おれはやらないよりもそっちの方が価値がある。やらないで、言われたことだけやってるうちはまだ駄目。
やって失敗をおれは認めるよ。

AGP:それは、ほかの回の、「ゴチになります!」の回の先輩も1勝0敗じゃなくて、6勝5敗の方が偉い。
5回負けてるけど、同じプラス1の勝ちだけど、チャレンジした数が多いだけ偉い。

若松:そうそう。

AGP:同じことを言われました。

若松:チャンレジしなきゃ駄目よ。何事もチャレンジ。
だから、学校行くと、授業料払うから学校の先生は教えてくれるわけ。
大学行くと。で、単位を取って、卒業する。だから、何なんだっていう話。
そこで教わったことだけを、おれは大学出てきました。だから、何?

若松:楽に楽はないんだよ。だから、人生楽ありゃ苦もあるさ。若いうちは苦しいことがあったら、必ず将来楽はある。
楽っていうのはどういうことかというと、それなりにやっていける人生が待ってるってことだよ。
若いうちに楽していて、将来楽しようって、そうはいかねえぞ。世の中うまくできてる。
だから、「自分の苦労は買ってでもしろ」っていう格言があるように、苦労を買わないと将来はないと思った方がいい。

AGP:なるほど。締まりました。最初の若松さんの傍若無人さにどうまとまるかと思ったんですけど、
さすがに見事に締まりました。後半、見事にやられました。

若松:だから、自分は最初、高校時代から苦があったわけで、あれよりつらい思いをしたことない。
だから、実はそのとき苦労だったことが今に、自分を育ててくれた。
あの苦しい思いをさせてくれた先輩たちには感謝です。

AGP:そうですね。今は感謝になったと。

若松:で、一つ言いたいのは、自分に優しい人は、会社でも何でも役立たない。
がみがみ、がみがみ言う人のことを聞いた方が将来はある。

AGP:耳の痛いことを、うるさいことを言う上司とか同僚とか。

若松:誰でも言いたくないわけ。可能性があるから言うわけ。
がみがみ言わない人、いいよ、いいよって言う人は全然役立たない。
もう一ついいこと言うよ。自分のいいところと先輩のいいところを足したら、必ず先輩より超える。

AGP:ああ、そうだ。

若松:ところが、先輩がちょっと楽してるとか、おれも先輩になったらちょっと楽しよう、楽しようと思うと、
自分の楽を足したら超えられない。

AGP:逆にいっちゃうわけですよね。

若松:先輩の楽してるところは捨てて。先輩が何をやっているかやいいところを自分の身にして、
自分のいいところを足したら、絶対上に行く。

AGP:それはいいですねえ。

若松:だから、人間って楽する動物だから、楽しよう、楽しようっていうと、楽に楽はなかりけり。

AGP:美術監督の言葉、名言ですよね。

若松:いやいや。だから、さっき自分の話していたら、おれは、だって、楽なところへ、楽なところへって行ってないでしょう。

AGP:はい。きついところへ、きついところへ行っていますね。

若松:きついところへ、きついところへ。そのきついところへ行ったときに、初めていい勉強になるし、自分の役立つ、が将来に役立つ。

AGP:これはすごい勉強になりました。

若松:かといって、今でもおれ苦しいよ。

AGP:今でも苦しいですか。

若松:苦しい。 仕事は一生勉強だから、やっぱりのたうち回りながらやるってことでしかないんだよ。
でも、『劔岳』じゃないけど、いざ自分がやる仕事っていうのは、命懸けでやるしかない。

AGP:だから、人に伝わるってことですよね。

若松:そう。あいさつをできたら、おれ60点の点数をあげる。あいさつできない奴は何やっても駄目。
なぜかというと、あいさつっていうのは、自分の心に言うものではなくて、相手に伝えるものなんだ。
あいさつをちゃんとできない人は仕事はちゃんとできない。
あるとき、偉そうにしてた監督がいて、おはようございますって言った、知らんぷりされたんだ。カッチーンって。

AGP:うわー、怖い。

若松:うちのおやじぐらいの年なんだけど、もう70過ぎてる。

AGP:そんな上。

若松:それから付き合いが始まって、おれがオーケーしないことはしないようになったんだ。
あいさつっていうのは人に伝えなきゃなんないって言ったでしょう。人に伝えなきゃなんないってことは、仕事はすべてそうだ。

AGP:そうですね、はい。

若松:あいさつぐらい伝えられないやつにね、何の仕事できるんだよ。

AGP:特に映画の業界ってそうですよね。何かを伝えようとしているんですよね。

若松:そう。

AGP:お客さまが感じない、受け取らないと成立しないですもんね。

若松:それが役立ったのが、おれは応援団だよな。

AGP:うわー、返ってきましたね、最初に。

若松:今撮ってる映画、舛田利雄監督から呼ばれて「若ちゃんさ、頼むよ」と言われて。大作さんも言ってくれている。
この前、監督と大作さんとおれと3人で飲みに行って、 「若ちゃん、本当の年いくつ」って聞かれたんだよ。

AGP:若松さんの年齢をですか。

若松:今、大作さん71なんだよ。

AGP:はい…。

若松:若ちゃん、本当の年いくつって。もうそろそろいいかと、じゃあ、本当のことを。あんたたちが思うとおりだよって言ってたんだよ。

AGP:若く見えるけどみたいな話ですよね。

若松:いや、違うよ。本当の年を教えてあげようかって言って、本当の年を教えたら、えーってなっちゃって。

AGP:そっちですか。 若松:うん。大作さんが「えっ、何、おれと一回りも違うの?!」って(笑)。

AGP:それはそうだと思いますよ。昔からの言いっぷりとかが。

若松:大作さんは自分よりは二つ、三つは下だろうなと思ってたって。

AGP:同世代かと。一回り違いますよね。

若松:「何? 30代からあんなに突っ張ってたの」って。そうだよ。

AGP:天草人ですね。木村さんの武勇伝にみんなびっくりする事は多いですが、その木村さんがびっくりした……。

若松:いねえや。一番最初から、闘ってきたってことさ。

AGP:そうですね。本当に今日はありがとうございました。